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説得

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花初そたい
花初そたい

雑記

百合の理由

新人賞に投稿された漫画に「相手が女性であるというポイントにノータッチな点(中略)設定に対する説得力不足」という評がついていて、ムムッとなってしまった。これについてぼくがTwitterでした言及は、あくまでいわゆる百合のファンであるという立場から一方的に・ジャンルを取り巻く状況を茶化しつつツイートしたもので、かなりズルい。実際のところ、新人賞ともなれば特にマスに訴えかける説得力が必要になるはずで、この評はそのあたりが欠けていたと言いたいのだろう。ぼくには漫画をビジネスの観点から評価する技能はない。 それでも、と思う。フィクションを扱う漫画雑誌が実際の世論に与える影響が全くないはずはないし、フィクションが率先して何の理由もなく女性同士の恋愛が成立する世界を描かないでどうするんだ? と思ってしまう。大ヒット中の映画「怪物」は良かったけれど、「また『可哀想な同性愛者』なのか……」という思いもあった。理解されず、社会に仕組みもなく、息苦しい同性愛者のほうが現実に即しているし「説得力がある」のかもしれない。けれど、たとえ当事者でなかったとしても、そんな話ばかりを読みたいだろうか? もちろん、これも何の責任もなく当事者でもない立場から勝手に言っているだけなのだけど、少なくとも「普通の恋愛」の範疇に同性同士の恋愛が入っていてほしいよなあ。

よかったもの

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

コロナ禍の大津市に生きる高校生を描いた小説。新潮が結構プッシュしていた。 「主人公が魅力的」とのことだったので読んでみたのだけど、う~ん、まあ、そんなに…… 現実味がない上に振り切れてもいないので、最後まであんまりノレずに終わった。かなり地域密着型の話なので、出身が近ければまた違ったのかもしれない。残念ながら、大津はサークルの用事で何度か行った程度だった。 コロナ禍の描写にはハッとさせられた。中3から高校卒業までを描いた話なのだけど、その間主人公はずっとマスクをつけていて、最初「なんでまだマスクをつけてるんだろう」とボンヤリ考えてしまったけれど、よく考えたら実際に今の高校三年生は中学生の頃からマスクをつけて生活しているのだった。高校生と関わる機会もないので全然意識したことがなかったが、大変なことだなあ。会話文のクッションとして「マスクの位置を直した」といった文が出てくるのが新鮮で、そこで一番コロナ禍の小説を感じたかもしれない。