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食によるテーマパーク

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花初そたい
花初そたい

雑記

テーマパーク

誕生日なのでちょっといいご飯を……ということで、モダンガストロノミーを食べに行った。あまり聞き慣れないジャンルだが、オモコロのレポで見た人も多いはず。 店はオシャレな下町から少し歩いたあたり、「閑静な住宅街」としか言いようがないほど周りにマンションと民家しかない場所にある。到着して扉を開けようとすると、まだ鍵が閉まっていて開かない。どうも、入店の合図とともに予約客が一斉に入店し、その客たちが帰った時点で閉店となるシステムの様子。創作フレンチとかだとよくあるスタイルだが、店の前に続々と予約客が集まってくる様子はテーマパークみたいでなんだか楽しい。ぼくはレポ漫画のせいもあり「こういう店に来る客は、気難しいかっちりした食通ばかりなのでは」と思っていたが、普通にナイキのパーカーとかで来ている人もおり、店内も北欧風のカジュアルな感じなのであまり気負うことはなかった。今回のメンバーはぼくたち以外初めてではなかったっぽいので、食通なのは間違いなさそうだが。

味覚の拡張

席に座ってメニューを見ると、「桜」から始まり「春の高原」「芽吹き」といった料理名が続く。?????と思っていると、運ばれてきたのは花瓶に刺さった桜の枝。よく見ると、何やら色の薄い枝に肉が巻いてあったり、実のようなものが刺さったりしている。呆然と眺めていると、おもむろに料理長が口を開く。「こちらは馬肉を生ハムにし、味噌漬けにしたものを巻いたおつまみになります。先に刺さっているのは生姜風味のオリーブです」云々…… ああ、「桜」ってこれか! このようなノリで、どんどん謎の料理が出てくるのだが、これがとんでもない経験だった。メニューを読んで首を傾げ、実物を見て首を傾げ、口に入れてみてさらに首を傾げる。説明を聞いても味が想像できないし、食べても味が説明できない。味のレイヤーが多すぎて、全然情報が処理できていない。そうなると、なぜか口が頭蓋骨いっぱいに広がったような感覚がする。レポにあった「口が広くなった」というのは言い得て妙すぎる。確かに口が広くなった。なんだこれは。 その後も最後の最後まで、首を高速回転させながら食べ続けることになった。なんだか、「味覚」という情報をフックにして、全然知らないところへ連れて行かれるような気持ち。おいしいのは間違いないのだが、おいしいとだけ言ってしまうのは勿体ないような気もするエンターテイメント性(傑作百合漫画に対する「ただの百合ではない」というコメントみたいだ)。アルコールペアリング込のディナーコースで一人約25000円と、一食にしては相当いかつい値段だが、これなら全然リピートはありだと思える。だってもうこれはテーマパークだから。ディズニーランドに一日行ったら25000円くらいはかかるけど、それで「うわ~高かったな」と思いながら帰ってくることはないでしょう。そういう感じだった。 今回は春のコースで、もうこれでもかというほど春を味わった、というかもはや春という概念を食ったような気持ちだが、このコースが四季折々に用意されていると思うとすごい。一季ごとに行くのはさすがにしんどいが、機会を見つけてまた行きたいな~。

つくったもの

なし。